東京地方裁判所 平成9年(特わ)1162号 判決 1997年9月25日
本店所在地
東京都豊島区南池袋三丁目一八番三一号フジビル四階
株式会社
銀河
(右代表者代表取締役 石井澄夫)
本店所在地
東京都港区新橋四丁目一二番八号
株式会社
翌檜
(右代表者代表取締役 石井澄夫)
本籍
東京都港区高輪一丁目二六番
住居
東京都目黒区五本木一丁目三九番一九号
職業
会社役員 石井澄夫
昭和二六年一二月二七日生
主文
被告会社株式会社銀河を罰金一八〇〇万円に、被告会社株式会社翌檜を罰金一四〇〇万円に、被告人石井澄夫を懲役一年二月に処する。
被告人石井澄夫に対し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社銀河(平成四年六月二四日以前の組織及び商号は有限会社銀河ネットワーク、平成四年六月二八日以前の商号は株式会社銀河ネットワーク)は、東京都豊島区南池袋三丁目一八番三一号フジビル四階(平成五年一〇月三一日以前は千葉県松戸市本町一四番地五稲生ビル一〇A、平成四年六月三〇日以前は東京都江東区亀戸一丁目三番六号)に本店を置き、電話回線利用による情報提供サービス等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成四年六月二四日以前の資本金は七〇〇万円)の株式会社、被告会社株式会社翌檜は、東京都港区新橋四丁目一二番八号に本店を置き、広告代理業等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人石井澄夫は、両被告会社の代表取締役として、両会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人石井は
第一 被告会社株式会社銀河の業務に関し、法人税を免れようと企て、情報科収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上
一 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が二億五〇五五万二六二一円(別紙1の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年五月二八日、東京都江東区亀戸二丁目一七番八号所在の所轄江東東税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億六四二八万三四五八円で、これに対する法人税額が六〇七七万〇四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成九年押第一二五一号の1)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額九三一二万一三〇〇円と右申告税額との差額三二三五万〇九〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
二 平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億二四〇七万七九二九円(別紙1の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年五月三〇日、東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号所在の所轄豊島税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が一五八〇万八九六九円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額四五七四万一八〇〇円(別紙2のほ脱税額計算書参照)を免れ
第二 被告会社株式会社翌檜の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿した上
一 平成四年二月三日から平成四年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四三七二万九五六〇円(別紙3の1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年一一月一三日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三八四万一九四二円で、これに対する法人税額が一〇六万八一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一五八八万四四〇〇円と右申告税額との差額一四八一万六三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
二 平成四年一〇月一日から平成五年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が八〇一九万一四六一円(別紙3の2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成五年一一月二二日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二一一〇万一二七二円で、これに対する法人税額が七一四万二三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の4)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二九三〇万一一〇〇円と右申告税額との差額二二一五万八八〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
三 平成五年一〇月一日から平成六年九月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得金額が七八七二万一八二七円(別紙3の3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成六年一一月三〇日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、欠損金額が二六九万五〇二九円で、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の5)を提出し、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額二八七六万〇三〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ
たものである。
(証拠の標目)
括弧内の甲乙の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書(乙1、3、7、8)
一 中嶋克己の検察官に対する供述調書(甲40)
判示冒頭の事実について
一 東京法務局墨田出張所登記官作成の閉鎖事項全部証明書(乙9、10)
一 東京法務局豊島出張所長作成(乙11)及び同港出張所長(乙12)の各回答書
判示第一の事実全部について
一 被告人の検察官に対する供述調書(乙2、4)
一 吉藤昭造(甲36)及び島村昭男(甲37)の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の情報料収入調査書(甲1)、NTT代行手数料調査書(甲2)、福利厚生費調査書(甲9)、交際費調査書(甲10)、支払手数料調査書(甲11)、受取利息調査書(甲14)、損金の額に算入した道府県民税利子割(甲15)、交際費等の損金不算入額調査書(甲16)及び領置てん末書(甲44)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲3、41)
判示第一の一の事実について
一 大蔵事務官作成の賃借料調査書(甲12)、貸倒引当金繰入限度超過額調査書(甲17)及び事業税認定損調査書(甲18)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲53)
一 押収してある法人税確定申告書一袋(平成九年押第一二五一号の1)
判示第一の二の事実について
一 大蔵事務官作成の広告宣伝費調査書(甲4)、備品消耗品費調査書(甲5)、通信費調査書(甲6)、役員報酬調査書(甲7)、給料手当調査書(甲8)、雑費調査書(甲13)及び申告欠損金調査書(甲19)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲52)
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の2)
判示第二の事実全部について
一 被告人の検察官に対する供述調書(乙5、6)
一 土屋進(甲38)及び松本正彦(甲39)の検察官に対する各供述調書
一 大蔵事務官作成の商品仕入高調査書(甲21)、福利厚生費調査書(甲25)、受取利息割引料調査書(甲28)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲31)及び領置てん末書(甲46)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲42)
判示第二の一及び第二の三の事実について
一 大蔵事務官作成の売上高調査書(甲20)
判示第二の一の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の3)
判示第二の二及び第二の三の事実について
一 大蔵事務官作成の役員報酬調査書(甲22)、給料手当調査書(甲23)、賞与調査書(甲24)、雑損失調査書(甲29)及び事業税認定損調査書(甲32)
判示第二の二の事実について
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の4)
判示第二の三の事実について
一 大蔵事務官作成の接待交際費調査書(甲26)、地代家賃調査書(甲27)、消費税戻入益調査書(甲30)、未払給料調査書(甲33)、未払広告費調査書(甲34)及び申告欠損金調査書(甲35)
一 押収してある法人税確定申告書一袋(同押号の5)
(法令の適用)
罰条
被告会社株式会社銀河につき
判示第一の各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
被告会社株式会社翌檜につき
判示第二の各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)
被告人につき 判示各事実につき、いずれも法人税法一五九条一項
刑種の選択
被告人につき いずれも懲役刑
併合罪の処理
被告会社両社につき 刑法四五条前段、四八条二項
被告人につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予
被告人につき 刑法二五条一項
※ なお、右の刑法四五条等の適用は、平成七年法律第九一号附則二条二項、三項によるものである。
(量刑の理由)
本件は、被告人経営にかかるダイヤルQ2を利用したツーショットダイヤルサービス等を目的とする被告会社株式会社銀河が二事業年度にわたり合計約七八〇〇万円あまりの法人税を免れ、やはり被告人経営にかかるダイヤルQ2番組の広告やテレホンクラブの経営等を目的とする被告会社株式会社翌檜が三事業年度にわたり合計約六五七〇万円あまりの法人税を免れた事案である。いずれもほ脱額は少なくなく、ほ脱率も被告会社株式会社銀河は通算約五六・二パーセント、被告会社株式会社翌檜は通算約八八・九パーセントといずれもかなりの率である。また、その手口は、被告会社株式会社銀河については借名名義でダイヤルQ2回線を取得することによって情報料収入を除外したほか、親族名義等で架空の役員報酬を計上するなどし、被告会社株式会社翌檜については、売上を除外したほか、知人に虚偽の請求書を発行してもらって架空仕入を計上したり、親族名義等で架空の役員報酬を計上するなどして所得を圧縮するという、いずれも計画的で悪質なものである。本件の動機をみても、被告人は、同業者でまともに納税している者はおらず、真面目に税金を払っていたのでは同業者との競争に負けてしまうとか、流行の変化の著しい業務であることから業績悪化に備えて裏金をプールしたかったとか、グループ企業を設立するための原資が欲しかったなどと供述しているが、いずれも格別斟酌するに値しないものである。これらの点からすると、被告人及び被告会社両社の刑事責任は到底軽視できるものではない。
しかし、被告会社両社は、その後修正申告の上本税その他を分割納付中であること、被告人は本件犯行を認め反省の態度を示していること、本件後、被告会社両社は新たな経理担当者を雇い入れるとともに公認会計士の指導を受けるなどして経理の適正化を図っていること、被告人には同種前科がないことなど、被告人及び被告会社両社のために酌むべき事情も存するので、以上の諸事情を総合考慮し、主文の刑が相当と判断した(求刑-被告会社両社・いずれも罰金二〇〇〇万円、被告人・懲役一年二月)。
(検察官福垣内進、私選弁護人上野勝各出席)
(裁判官 保坂直樹)
別紙1の1 修正損益計算書
<省略>
別紙1の2 修正損益計算書
<省略>
別紙2
ほ脱税額計算書
株式会社 銀河
<1> 自 平成3年4月1日
至 平成4年3月31日
<省略>
<2> 自 平成5年4月1日
至 平成6年3月31日
<省略>
別紙3の1
修正損益計算書
<省略>
別紙3の2
修正損益計算書
<省略>
別紙3の3
修正損益計算書
<省略>
別紙4
ほ脱税額計算書
株式会社 銀河
<1> 自 平成4年2月3日
至 平成4年9月30日
<省略>
<2> 自 平成4年10月1日
至 平成6年9月30日
<省略>
<3> 自 平成5年10月1日
至 平成6年9月30日
<省略>